2017.01.23

長野県高山村 日本版「首長誓約」第2号誓約式 パネルディスカッション概要

日時:平成28年8月11日(木)祝日/山の日
13時30分~16時00分
場所:高山村保健福祉総合センター(チャオル)

第1部 日本版「首長誓約」誓約式
◇開会
1. 日本版「首長誓約」の説明
2. 署名・登録証の授与
3. 記念撮影
4. あいさつ
5. 来賓あいさつ
6. 高井発電所発電状況モニターの贈呈

第2部 基調講演・パネルディスカッション
1. 基調講演
「美しい村のエネルギーは地産地消!」 名古屋大学教授 竹内 恒夫
2. パネルディスカッション
テーマ「地球にやさしい高山村」
○コーディネーター   地域の未来・志援センター理事  萩原 喜之
○パネリスト      横浜国立大学教授   松田裕之
名古屋大学教授    竹内恒夫
名古屋大学特任准教授 杉山範子
高山村長       久保田勝士
◇閉会

■パネルディスカッション 概要

萩原:高山村は、昨年度、環境基本条例を策定されました。まずは、その環境基本条例策定委員会の委員長を務められた松田さんから、今回の誓約について感想をお願いいたします。

松田:環境基本条例を作る取組み、美しい村連合、ユネスコエコパークの登録、また、今回の「首長誓約」という世界的な取組みに参加することもそうですが、高山村の場合は、登録することで何か新しいことを始めるというのではなく、これらは全てこれまで高山村がやってきたこと。環境にやさしい取り組みを通じて地域をもり立てていくことに、国や世界の取組みの方が追いついてきている、そんなふうに思っております。高山村のみなさんがもともと取り組んできたことが、改めて、再生可能エネルギーの推進など、日本版「首長誓約」として表現されたということではないでしょうか。これからの取組みにも大変期待しています。

萩原:次は日本版「首長誓約」事務局であり、高山村環境審議会の委員にも就任された杉山さん、すでに8月2日に松田さんが会長を務める環境審議会が開催されたとのことですが、村の外から見て、どのような感じなのかお話しください。

杉山:先日、高山村の環境基本計画を作っていく環境審議会に初めて参加させていただきました。審議会は様々な分野を代表される方が委員になっておられます。そこで、日本版「首長誓約」の説明をさせていただき、委員の方から質問や意見をいただきました。私は大変感銘を受けました。委員の方から、「首長誓約」の内容について、「大変賛同します、でも、これは誰が進めていくのですか?」と言われたのです。名古屋大学が外からこれをやってください、というのではなくて、村の中で誰がリーダーシップをとって進めていくのか、そうしないと実現しない、そういった人材育成はどうするのか、と言われたのです。また、「エネルギーの地産地消」を進めるのは、「誰がすることを想定しているのか、村の外の人ですか、中の人ですか?」という質問がありました。もちろん、村の中の人を想定していますが、すでにみなさんの意識が、これは村の誰が進めていくのか、という視点で具体的に考えていらっしゃることは、素晴らしいと思いました。

萩原:会場に来ていらっしゃる方で、審議会の委員の方、手を挙げていただけますか?7名ほどいらっしゃいますね。後ほど、ご意見を伺うかもしれません。それでは竹内さん、高山村と首長誓約をどのようにつなげていったらよいでしょうか。お願いします。

竹内:先ほどの基調講演で、自治体で取り組む小売り事業などについてご提案をいたしました。私がお話ししたのは、あくまで提案です。これから実現するのは、村のみなさんです。私だったらこうするという提案を出していただいてエネルギーの地産地消を進めていただけるとよいと思っております。

萩原:松田さん、環境審議会では、先ほど、杉山さんが話した「誰が」進めていくのかといった議論は今後、していくのでしょうか?

松田:「誰がやるのか」ということは、今後、環境審議会で話していくことと認識しております。昨年度、環境審議会で感銘を受けたのは、中学生・高校生の代表が来ていたことです。まさに、人づくりから始めていること、これが高山村では定着していると感じました。これはユネスコエコパークでも同じです。ユネスコの最大の使命は、自然を守ることではなくて、人づくりなのです。そういう意識の中で様々な取組みが行われています。こうした世界的なものに登録されると、何か世界に合わせないといけないと思うかもしれませんが、そうではなくて、むしろ、自分たちの取組みのように世界に共通する何か良いものがあるのだということ。その1つが、今回の「首長誓約」というふうに私は思っております。

萩原:今日はこのシンポジウムの会場にお子さんは来ていませんが、未来を担う子どもたちにもこうした場に参加してもらえるといいですよね。環境審議会ではそうした仕組みを提案して一緒にやってもらえるといいなと思います。このディスカッションで村長は、あまり発言はなさらないとおっしゃっていましたが、村長、みなさんのお話を聞いて、これからのイメージなど浮かんでいるのでしょうか?

久保田村長:今日は、世界的にご活躍の先生方から違った視点でお話しいただきまして、これまで高山村が取り組んできたことが、あながち、間違いではなかったなと確認できました。そして改めて、これからも村民のみなさんとともに、自分たちにできることをしっかりやっていこう、と思っております。これが村の姿勢でいいと思います。またご指導いただければと思います。

萩原:今日は多くの村民のみなさんにもお集まりいただきましたので、会場のみなさんにも感想やご意見を伺おうと思います。

会場より(お一人目):私は村の社会教育の関係で、環境審議会の委員をしております。「首長誓約」もそうなのですが、環境条例やユネスコエコパークなど、村長と村のいろいろな方々と進めてきていただいています。地域の人たちが何か考えて、地域の若い人たち・子どもたちに「やれ」というのではなく、何か「こういうことがいいんだよね」となるようにしたい。例えば、ごみが落ちていたら、それは拾うだけではなくて、「これは何かの資源になるんだよね」という気持ちになるような学びが大切だと考えています。先ほど「誰がやるのか」という話もそうですが、リーダーシップをとれる人、コーディネーターができる人を養っていくことが、いい形になるのではないかと思います。

萩原:男性にお聞きしましたので、今度は、女性にご意見を伺いましょう。

会場より(お二人目):今日は、貴重なお話を聞かせていただきありがとうございます。私も環境審議会の委員です。日本は、明治維新の時に伊藤博文さんたちが100年教育としてたくさんの人たちに読み書き、そろばんを教えたことが、国を富ませるのだといって取り組んできました。今、現実に、9割以上の人たちが、読み書きと計算ができる、豊かな国になっています。高山村でも先を見越した長期ビジョンをもって、子どもたちが自分の村は自分で守っていくという教育ができればいいと思います。

萩原:「私も発言したい」と手をあげてくださる方はいらっしゃいませんか? ……なかなか、いらっしゃいませんね。それでは、もう一方、お話を伺いたいと思います。

会場より(三人目):私は、堀之内地区の衛生組合長をしております。この「首長誓約」の案内をいただいたとき、いったい何をしなければならないのか、と思いました。もしかしたら、ごみの区分けをもっとしっかりしろということなのか、と思ったのですが、今日、話をきかせてもらってわかりました。これは、個人個人の取組み一つ一つが、非常に大事になるなと感じております。私は、買い物をするときに袋をもらわない、薬をもらうときにナイロン袋をもらわないようにしていますが、一度、それをためてみたら、段ボールいっぱいになってしまいました。これを資源回収に出して、もう一回使うといいのかもしれませんが、私もこれからしっかり向き合っていかなければと思いました。

萩原:みなさん、ありがとうございました。高山村の方は、マイクを向ければどなたもしっかりお話しいただけることが分かりました。それでは再び壇上に戻ります。竹内さん、みなさんのお話を受けて、コメントをお願いします。

竹内:先ほど少しお話ししましたが、モノのシェアリングやモノのリユースが重要になってくると思っております。薬の袋などは、自分で専用の袋を布で作って、これに入れてください、ナイロン袋はいりませんよ、と言えば済むかもしれません。それもリユースなのです。困る人は出てこないかもしれません。

萩原:ごみを減らすという観点もあるのかもしれません。ごみの場合は焼却処分ですが、ただ燃やすというのはもったいない、発電という方法もありますが。

竹内:高山村ではごみの焼却は一部事務組合で、広域連携でやっているのですか?(小布施と須坂との広域連合でごみを処分。ごみ発電は行っていない。) 今後、ごみ発電に取り組んで、その電力の高山村分(排出するごみの量の割合に応じて)を、村へ供給することも考えられますね。

萩原:先ほどの一人一人の生活と「首長誓約」とはとても関係しているのだということがわかりますね。

杉山:村のみなさんがこれからどうしていくのかがとても重要だと思います。これまで、環境問題と言われることは、例えば、CO2を減らしてください、と国に言われるから取り組む、という受け身だったと思いますが、そうではなくて、地域のエネルギー資源を使うことで、地域のみなさんの大切なお金が化石燃料によるエネルギー料金として地域外に出ていくのではなく、地域の中で循環して、結果的にCO2も減らすことができる、というのが重要だと思います。何をしたらよいのかを村のみなさんで工夫して組み込んでいくことが大切だと思います。「首長誓約」は欧州の仕組みを参考にしましたが、この仕組みを考えた人は、「我々は、首長誓約を取り組んでくれと頼んでいるのではないのです、地域の人がやりたい、という意志が大切なのです。」とお話されていました。今日、この会場の中で、この取り組みは重要だ、よし、自分もやろうと考えてくださる方が、一人でも多くいらっしゃいましたらうれしく思います。

松田:「首長誓約」はエネルギー自治の話ですが、環境問題だけではなく、健康、平和、友好など様々な問題があると思います。そのうちの1つが環境問題。私たちはこういうことをしなくてはいけない、守らなくてはいけない、我慢しなくてはいけないとばかり考えるよりは、本当に持続可能な世の中というのはどういうことなのかを考えることが大切。絶対にこうしないといけないと窮屈に考えるほうが健康に良くないと思います。楽しんでやることが大事。そのためには、自分が工夫してどんどん試してみることがいいのではないでしょうか?環境にやさしいことはどういうことなのかを考え、楽しみながら試してもらうことを心がけてもらいたいと思います。

萩原:今日の基調講演にも無理や強制ではリバウンドがある、「充足」、「足るを知る」という話がありました。最後に、パネリストのみなさんに、今日お越しいただいた方々へのメッセージをお願いします。

松田:ユネスコエコパークができたころは、その取り組みは「自然を守ること」だと思われていました。1980年にここが登録されたころもそうでした。それが時を経て、やはりこれは人間のためなのだということが認識されてきています。自然の恵みを生かしながら、いかに地域を自立させていくかということ。持続可能な社会のモデルを目指す取り組みになってきています。高山村の環境基本条例にも「首長誓約」にも通じる考え方だと思います。自然は使うもの、ただし、次の世代にちゃんと残しながら使える方法をみなさんに考えていただきたいと思います。

竹内:みなさんにアンケート用紙が配られていますが、この機会に、アンケート用紙に、みなさんのアイディアを書いていただくといいと思います。みなさんから村長に、「村でこんなことをしてはどうか」という提案をどんどん出してもらうといいのではないでしょうか。一人ではできないことは、村全体で取り組む。それと併せて、自分はこんなことをします、ということを村の7千人の方にも書いていただくと面白いと思います。

杉山:都市は今、「持続可能でない」「快適でない」方向へどんどん進んでいるように感じます。しかし、高山村を訪れる度、本当に豊かな暮らしがここにあると実感しています。ここにエネルギーの観点を入れて、たくさんのお金をかけなくても、CO2を出さなくても、地域の資源を使って、こんなに豊かな暮らしができるんですよ、というお手本をぜひみなさんに示していただきたい。これを日本中に発信していただきたいと思います。

萩原:新たに何かするのではなくて、もともとあった地域の良さを磨くこと、発信することで持続可能な社会にできるのではないかと聞いておりました。では、久保田村長、お願いします。

村長:高山村のみなさんは、この地域の農地や田園風景をどう守るかという意識が潜在的にあったのだと思います。農地と水、環境の交付金があったのですが、不耕作地をきれいにしていこうというもので、この取り組みが村に広がり、160haくらいに交付金がもらえるようになりました。都市部と違って都市計画などの規制の中で行われるものではないので、景観条例は絵に描いた餅になりがちなのですが、みなさんの農地を守ろう、きれいにしようという意識がない限りは生かされないのです。リーダーシップだとか誰がやるのかということでなく、みなさんの意識が潜在的にあったのです。こうした意識が景観条例に結び付くきっかけになったのではないかと思います。高山村の場合は、目に映る景観を大切にするだけではなく、目に見えない生態系もすべて景観なのだという理念、人と自然の共生も条例の本旨になっています。
景観条例もユネスコエコパークも美しい村連合もすべてつながっている、そして、今回の「首長誓約」に結び付きました。高山村のみなさんは、環境問題に無関心なわけではありません。CO2をどれだけ削減するかということは難しいことかもしれませんが、身の回りをきれいにして環境を良くしていこう、環境基本条例の前文にもありますが、自分たちにできることをやっていくことで、ひいては地球環境にも貢献していこうということでやっていきたいと思います。先生方にもまたご指導いただきたいと思います。
今日は村民のみなさんに大勢ご参加いただきました。未来ある子どもたちにいい環境を残していくためには、お一人お一人の気持ちがなければ実現できませんから、ぜひ、ご協力をお願いしたいと思います。

萩原:ありがとうございました。今日、みなさんのお話を伺って、竹内さんの講演で紹介されたエネルギー自治の先進地、ドイツのトートナウ市と響き合うものを感じました。ぜひ、同市と高山村の交流が実現するとよいですね。松田さんのお話では、環境だけではなく、健康、平和、友好などの観点もありました。エネルギーや環境の話がメインでしたが、「美しい村」という言葉にすべて含まれるのではないかと思いました。ただ、環境審議会でもでたようにそれを「誰が担うのか?」という課題があります。それは、高山村に住んでおられるみなさんではないでしょうか?きっかけは、行政、村長だったかもしれませんが、ぜひ、中高生のみなさんが参加できる場づくりもして、村民のみなさんで議論していただけると良いのではないかと思います。
それでは会場のみなさん、今日は長時間お付き合いいただき誠にありがとうございました。最後に全員で記念撮影をして終わりたいと思います。中央の方へお集まりください。よろしくお願いいたします!